A「年をとって耳が遠くなるのはやむを得ないことです、しかしどの程度聞き難いのか本人も周りの人もはっきり分からないのでいろいろと誤解を生むこともあります。老人の難聴は大きく分けて三つの原因によります。健康な人に起こる生理的な難聴、加齢による老人特有の病気が原因で起こる難聴、慢性中耳炎や若いときにストマイを使った、騒音下で仕事を長年続けていたなどの原因による難聴があります。非常に聞こえが悪い場合には二番目か三番目のことが多いです。老人性難聴の特徴には何か聞こえるが、それが何を言っているのか分からない、言葉の明瞭度の低下があります。高い音がだんだん聞こえなくなるのも特徴の一つです、日常会話は比較的低い音なので健康で有れば70歳を過ぎても大きな支障がない人が大勢います。75歳のNさんはピアノを教えています、少し聞き難くなったので鍼治療を行いました、ご本人はよけいな音が聞こえなくなり非常に澄んだ音になり聞きやすくなったと感想を述べてくれました。全身を調整する経穴と耳の周囲にある翳風(えいふう)、聴宮(ちょうきゅう)などを使いました。

日経新聞 夕刊【鍼灸よろず相談】にて掲載したものの一部です。
石野尚吾