A膝の周囲には多くの滑液包というものがあります。これは関節内の滑膜と同じような細胞の袋状の組織からなります。ベーカー嚢腫とは膝の裏である膝窩(しっか)の滑液包が何らかの原因で炎症をおこし、異常に滑液がたまる病気です。
症状は膝窩の腫れで膝を曲げる時に圧迫感や違和感があり、痛みを訴えることは少ないです。ただ、時に大きくなって周囲の血管や神経を圧迫し、膝の痛みや下腿(かたい)の腫れ、静脈炎などをおこすこともあります。変形関節症に伴い女性に多い疾患です。
76歳のTさんは変形性膝関節症があり膝関節に水が溜まり、同時にベーカー嚢腫を併発しました。痛みや運動制限はありませんが、異物感が気になります。鍼(はり)治療は膝蓋(しつがい)上辺二穴、膝眼(しつがん)穴、委中(いちゅう)を使い、ほどなく違和感は解消されました。

日経新聞 夕刊【鍼灸よろず相談】にて掲載したものの一部です。
石野尚吾
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